医師が開業や転職をする際に、『開業場所や次の勤務先の決定をする』ということにエネルギーを注ぎ込むと言うことは当然のことだと思います。そして、実際に決定してしまうと、肩の荷が下りたような感じになってしまい、後はその時が来るまで待つだけになると思います。
しかし、当然のことながら今の勤務先を綺麗に【退職】しなければなりません。
しがらみの多い医師という職業において、退職は大きなポイントとなるため、できるだけ慎重に行動する必要があります。
今回は、円満に退職するための流れと抑えておきたいポイントをご紹介したいと思います。
医師が職場を退職する時の正しい手順
人事責任者に退職の意思を伝える
まず人事担当者の空いているときを見計らい、冷静に丁寧な言葉で退職の意思を伝えます。
勤め先への不満を持ち、退職するときも、退職理由は一身上の都合とします。「より一層経験を積みたい」と説明し、無用な波風は立てないようにします。
また、大学医局側から内々の打診が病院側に入り、正式に決まった場合は、自らも人事責任者に伝えます。そして正式に決定した後、同僚・スタッフに伝えます。人事の噂は現場の士気をさげることもありますので気をつけてください。
退職日の決定
退職日については、勤務先と円満に決めることが望ましいでしょう。
早いドクターでは1年前に伝える方もいますが、およそ半年前から3ヶ月前が良いでしょう。
次にくる医師の就任日が決まれば、自ずと退職日は決まります。
外来窓口や病棟のローテーションなど、院内に迷惑をかけることは極力避けます。
できれば、次の医師に円滑に引き継げるように、余裕を持って退職する日を決定しましょう。
退職届の提出
「退職届」の提出が必要かどうかは、病院によって異なりますが、雇用期限の定めのない契約(民間企業でいうところの終身雇用の正社員)の場合で、自己都合のときは「退職届」の提出を求められることが多いと思われます。書式を定めているところもあるので確認します。
退職日は、先ほど話したとおり勤務先と円満に決めることが大切。
退職をする半年前から3ヶ月前までに伝える方が比較的多いようです。
また医局人事でローテーションが組まれている場合、退職届を出さないところもあります。
その場合には、勤務先の事務部門に確認してその指示に従います。
引き継ぎ
カルテの構造上、毎日が「引き継ぎ」ですが、前任者に問い合わせることができないこともあるため、特に一般公募で医師を採用する病院では引き継ぎが重要です。
主治医として長期療養の患者を抱えているときなどは、ドクターによっては、気になる事項を「引継書」に書いて去られる方もいます。院長、副院長職等で、経営者としての役割を担っていた場合は、外部との交渉案件、経営上の課題について「引継書」を作るべきでしょう。
また医師という職業では、もともとカルテの構造上、毎日がほぼ「引き継ぎ」であり、特段「引継書」を作る必要がないケースもたくさんあります。これは医局人事の場合、先輩・後輩の関係で引き継がれていくので、いつでも連絡が取れるという背景もあります。
退職の挨拶
職場を去るにあたっては、しっかりと退職の挨拶をして去りましょう。
お世話になったスタッフ・職員等にひとこと挨拶をして去ることが望ましいです。
規模にもよりますが、専門職は交代制で動いており、また、退職直前は忙しくなるので、一日で挨拶はできません。退職の数日前から、仕事で縁があった人には挨拶をしておきます。
患者さんへの挨拶は、時と場合によります。主治医として入院患者の対応をしていた場合、同僚に引き継ぐ旨をきちんと説明するなどの配慮があったほうが、よいこともあります。
退職時に返すもの
健康保険証
職員身分証・IDカード
名札・名刺
自分専用で使用してきたパソコンのデータ整理・消去
病院施設の鍵、ロッカーの鍵、警備キー、駐車場ゲートカード等の鍵類
PHS、ポケベル等の通信機器
病院貸与の制服類器
退職時に受け取るもの、持ち帰るもの
雇用保険被保険者証
離職票(医師の場合、通常次の就職先が決まっていることが多く、そのときは不要です)
源泉徴収票
年金手帳(通常、自己保管だが、事務部門に預けている場合は必ず受領します)
退職証明書(自治体や医療法人勤務から開業医になるときは、国民年金・医師国保への加入届とともに提出を求められることもあります)
各種の私物
医師が職場を退職する方法まとめ
いかがでしたでしょうか。
退職は、スキルアップやQOLの向上の過程で避けては通れませんが、周囲に迷惑をかけないようになるべく早めに退職する意思を伝えて、引継ぎをしっかりと行い綺麗に次の職場に移動できるようにしましょう。
また、医局を辞める際には、なるべく円満に辞められるように最善の退職方法を知っておきましょう。詳しくは、「医局の円満な辞め方まとめ」の記事を参考にしてください。